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富士山麓AIハッカソン「Project DENT」に参加してきた

AI雑記

ちょうど1週間前のこと。2026年4月20、21日の2日間にわたり、富士山麓AIハッカソン「Project DENT」に参加してきました。「DENT」とは「凹み」のこと。主催者の清水亮さんから、宇宙を抉るようなアイデアや成果を期待するテーマとして、ハッカソン開始の5分前に発表されました。実際にテーマが発表されるまで、このハッカソンについて事前にわかっていたのは富士山のふもとで泊まりがけで行われることと、AIを活用したハッカソンであることくらいでした。AIを使って開発するのか、AIを組み込んだものを開発するのかさえわからない、ミステリーツアーだったのです。

そもそもこのハッカソンに参加するきっかけは、かつて作品制作をご一緒した、メディアアーティストでありエンジニアである水落大さんに声をかけていただいたことでした。そして水落さんもまた、toioの開発者である田中章愛さんからお誘いがあったとのこと。参加することになったら田中さん、水落さんとチームを組んで何かを作るらしい。何をやるのかわからない状況でしたが、このお二人と開発を一緒にできるのはまたとない機会だと思い参加することにしました。

蓋を開けてみると、他のチームの参加者も「どこでもいっしょ」で有名なビサイド代表の南治一徳さん、ゲームAI研究の第一人者として知られる三宅陽一郎さん、ゲームCGのパイオニア橋本和幸さんと豪華メンバー揃い。 なんてところに迷い込んでしまったんだ…。 さらにテック領域のプロだけでなく、新宿ゴールデン街のバーテンダーさんで構成されるチームも。多様性に溢れたこのハッカソンは一体どうなるのか。

会場はSANU 2nd Home 河口湖 2nd。富士山が見えるコテージ群が宿泊施設であり、開発拠点です。開発するだけでは勿体無いような、でものびのびと集中して開発するのに最高のロケーションでした。気分が良いだけでなく、自然に囲まれた環境だからこそ生み出されるアイデアや作品がいくつもありました。

最高のロケーション SANU

長いようで短い非常に濃密な2日間でした。(会場に着いてから食事の時間以外はずっと開発に打ち込み、夜通し開発していたので、実際に活動していた時間は長かった。)頭の普段使わない部分を思い切り使って、色々学びがあったので、忘れないようにまとめておきたいと思います。

最後にリンクをまとめていますが、イベント全体や他のチームの取り組みについて詳細にまとめてくださっている記事があります。この記事では私たちのチームが何を考え、何をやっていたかを中心に書いていきます。

前日まで

事前に何を準備しようか、何をやろうかという確認を、田中さん、水落さんとチャットで軽くやりとりしました。 テーマもルールも知らない状態だったので、あまり具体的なことまでは話をしなかったですが、toio※を使ってフィジカルAIをやろう、みたいなぼんやりとした認識合わせをしました。持ち物は、何か使えそうなものを各々持ち寄ることに。ラップトップや工具、電子部品、工作に使えそうなテープや筆記用具などをそれぞれ鞄に詰め込みました。 1日目の夕食はチームごとにコテージで自炊をすることになっていたのですが、前日までのチャットのやりとりで最も具体的な話がまとまったのは、1日目の夕食の献立だったと思います。

※小さなキューブ型の白いロボットトイ。センサーやモーターが内蔵されており、プログラムにより自由に動かすことができる。

toio

ハッカソン開始まで

朝5時半に起きて、7時半に新宿に集合。 待ち合わせ場所で待っていると、田中さんが 3Dプリンタをハンドキャリーで登場。持ち運びはとても大変そうでしたが、ハッカソンでは3Dプリンタが大活躍でした。本当にありがとうございます。

そこから水落さんも合流し、参加者一同、観光バスに乗り込み、会場に向かいました。移動中はバスで参加者全員で自己紹介。ここで他の参加者の方も今回の詳細を知らされていないらしい、ということがわかって少し安心しました。

バスの中でチーム名を決めてくださいと案内があり、toioを使って制作をすることと、シンプルでキャッチーな名前がいいよね、ということでチーム名は「トイ・トリオ」に決まりました。「トイオ」「トリオ」をもじっています。toioを使う3人組。

チーム名はトイトリオに

会場に到着すると、清水さんからハッカソンの正式名称「Project DENT」とともに、AIを活用したゲーム制作に取り組むということと、評価軸が発表されました。 AIを活用するというのは、ゲームを制作する道具としてAIを使うのはもちろんのこと、制作するゲームの中にAIを組み込むことを意味します。 ハッカソンは到着直後昼から夕方までに2本、1日目の21時から2日目の朝9時にかけて1本の、計3ラウンド行うことになるのですが、この場で1ラウンド目のテーマが発表されました。

ルール説明のようす

第1ラウンド: 自然

1ラウンド目のテーマは「自然」。そして制限時間の90分の間に最低3つのゲームをつくること。数が多ければ多いほど加点されるというルール。 このルールが告げられた直後からタイマーは無慈悲に動き出します。

「さぁ、何を作りましょうか。」

コテージに戻った私たち「トイ・トリオ」はしばらく考え込みました。そして議論の末、最低3つ作るというボトムラインを達成するために、まずはそれぞれ思いついたゲームを1つは作って、残り時間でこだわりのあるゲームを作ろうという方針に。数をたくさん作るなら、とGeminiのCanvasモードでそれぞれハイペースで作り上げていきます。

GeminiのCanvasモードはWebフロントエンド技術を使ってゲームやWebページをあっという間に作ることができます。さらに、「Geminiの機能を追加」というボタンを押すだけで、AI機能を簡単に組み込める。ゲームにAIを搭載しようとしたときに、「作ったゲーム内で生成AIのAPIを叩く」という技術的な思考や手続きを意識しなくてもできてしまいます。まだ使ったことがない方はぜひ遊んでみてください。

Google Gemini: https://gemini.google.com/app

最終的に3人で13個のゲームが出来上がりましたが、発表時間が長くなりすぎないよう、それぞれ最もよくできたと思うものを1つずつ発表しました。

富士山噴火 落石よけゲーム

落石避けゲーム

火山が噴火して、飛んでくる落石を回避する避けゲーです。水落さんが担当しました。

Webカメラに写っている自分の姿がコントローラーになります。顔認識されており、画面の前で左右に動くことで岩石を避けます。

落石避けゲーム

会場は富士山が見えるコテージ。医療やテクノロジーの進化により、ヒトの寿命が半永久になったり、デジタル世界に生きることになったらと想像してみます。前回富士山が噴火したのは300年前ですが、現在の人間の寿命のタイムスケールで考えるとはるか昔に感じるかもしれません。人類がより長い寿命を手にした時、富士山という活火山が噴火するという自然の脅威がより短いスパンで発生しているように感じる世界観に思いを馳せました。ゲームでは次々と岩石が飛んできて、忙しなく回避する体験ができます。

ちなみにプレゼンに使うキービジュアルは最近出たChatGPT Images 2.0で水落さんが生成してくれました。短時間でゲームも作って発表資料も作っちゃう仕事の速さたるや。

文明再興のガイア・レース

文明再興のガイア・レース

「身の回りの発見が、人類を前進させる一歩になる」というコンセプトのゲームです。田中さんが担当しました。

最初に自然、文明、神秘といったカテゴリと、「時の流れを象徴する風化した何か」といったテーマが出題されます。 プレイヤーはテーマに合うものを探してカメラで撮影します。 直接的ではないが、身の回りにありそうなものが出題されるところがやってみようという気持ちをくすぐります。

どんなものを撮影するのか、テーマ発表

テーマに合致したものを撮影するとより高い得点(叡智ポイント)が入ります。 ゲーム性はシンプルですが、結果画面に御信託のようなメッセージが表示されて音声が読み上げられ、写真がをもとに生成されたSFチックな画像が気分を盛り上げます。

評価画面結果画面

自己増殖するゲーム GenoGame

自己増殖するゲーム GenoGame

無限に増殖するゲームGenoGame。私が担当しました。

ゲーム同士が交配し、新たなゲームが生まれる、ゲーム自身が主役となるライフゲームです。自然と言えば、私は草木や動物たちを想像します。そうした自然が脈々と生命を繋いで繁殖してきたさまを、表現したいと考えました。最初はプロンプトをもとに作られた2つのゲームから始まります。1分に一度、ゲームライブラリの中にあるゲーム2つが選ばれ、それぞれのエッセンスがかけ合わさった新しいゲームがバックグラウンドでAIにより生成されます。

GenoGameトップ画面

手動でプロンプトからゲームを生成する部分はうまくいったものの、2つのゲームを交配したゲームの生成は制限時間内に不具合を取りきれず断念しました。アイデアを発表するだけでなく、作って形にするのがハッカソン。発表タイムまでに動くようにできなかったところが惜しかったです。しかも家に帰ってから動かしてみたら何事もなく動いたので悔しい…。

2つのゲームのエッセンスが合わさった新しいゲーム

第2ラウンド: 風船と買い出し

1ラウンド目の制作が終わったらすぐに、休む間もなく第2ラウンド目のルールが発表されました。 1つ目は風船を使うこと。2つ目は3000円分の買い出しに行き、そこで買ったものを使うこと。 今回は1ラウンド目とは異なり、たくさん作っても評価されません。買い出しを含め120分の間に、チームで独創的で創造的なゲームを作る必要があります。

目の前にtoioがあり、風船がある。ゲームとしてすぐに思いついたのは、toioに針をつけて風船を割るゲーム。ストレートすぎて、いまいち捻りがないので、他のチームとアイデアが被ってしまいそうということで考え直すことにしました。こうして考えている間にアイデアは生煮えのまま、買い出しに出発する時間に。我々のチームの代表として水落さんに買い出しに行っていただき、田中さんと私は残ってアイデア出しと開発をすることになりました。

普段、都会ではできないことをやりたいよね、という発想と、SANUさんの宿泊ガイドに「焚き火台周辺であれば手持ち花火をやってもOK」との記載があったことから、完成像は曖昧なまま「ろうそく」と「花火」を購入。toioが走るコースを作るために、骨組みとなる「支柱」と「ダンボール」を調達しました。

針で割るのではなく、少し捻って火で風船を割るのは面白いかも、ということで実験。火が当たっても風船はすぐには割れず、しばらく経ってから割れることがわかりました。もともと「風船を割らないようにしてゴールを目指すレースゲームというのはどうだろう」と話していましたが、逆に風船を割ってからゴールする方がゲームとして面白そうだと方針転換するための判断材料になりました。

火で風船が割れるのか実験

今回のゲームは複数人で楽しめるものにしたい、という思いがチームで一致していたので、買い出しの裏で田中さんはtoioを3人で同時操作できるプログラムを開発。

買い出し班が帰ってくると残り時間は30分。じっと考えている時間はない!toioが動けるコースを作るため、焚き火台と丸太のスツールの間にダンボールを貼り付けながら、ゲームルールやコンセプトを考えます。そしてタイムアップとほぼ同時にゲームが完成しました。

花火に着火!障害物レース

花火に着火!障害物レース

最終的に完成したのは、コース上にある自分に割り当てられた色の風船を全て割って、ゴールにある花火に着火したプレイヤーが勝利というゲームです。 プレイヤーが操作するtoioにはろうそくが付けられており、その火を風船に当てることで風船を割ります。 割るための風船は別のtoioに取り付けられており、プレイヤーのtoioを追いかける動きをすることで絶妙に割りにくい動きをします。

レースの様子

ゴールに到着し花火に着火すると、歓声が上がる。

ゴールする様子

実際のプレイの様子はガジェタッチさんのライブ配信のアーカイブをご覧ください。

夕食タイム

2ラウンド目の開発が終えて束の間の休息。各チーム、コテージで思い思いの夕食を作ります。 私たちのチームは田中シェフ、水落シェフのおかげで最高のひとときを過ごすことができました。私は第2ラウンドの片付けと、皿洗いで貢献。

田中さん作の「即席釜焼きピザ」「グリルチキン」「手ごねハンバーグ」、水落さん作の「カルボナーラ」「和風パスタ」というフルコースをいただきました。あのチームの夕食は豪華らしいぞ、と他のチームで噂になる程の充実した夕食。めちゃくちゃ美味しかったです。

水落さん特製カルボナーラと… 水落さん特製パスタ

田中さんの即席ピザ窯で焼いたマルゲリータ! AIだけでなく、キャンプ飯スキルも学べる合宿となりました。 田中さん自家製窯のピザ

第3ラウンド: AIゲームセンター

夕食を終えたら、広場で焚き火を囲んでキャンプファイヤーです。 ここで、最後のハッカソンのテーマが発表されます。清水さんが立ち上げたクラウドファンディングのプロジェクトAIゲームセンター構想のゲームセンターに置ける、複数人で遊べるゲームを作ること。

夕食後はみんなでキャンプファイヤー

ゲームセンターに設置するため、収益性を考えると回転率が大事なので1回のプレイは3分以内に収まること、そしてまたやりたいと思うような体験であることが要件となります。他のチームが、悔しいけど遊んでしまうようなゲームを作ることを目指します。

説明が終わると、夜の21時から朝9時まで12時間の最終ラウンドがスタートしました。

朝5時に起きて、昼に会場に到着してからほぼずっと頭をフル回転している状態だったので、すでにへとへとでした。しかし、半日かければどんな面白いものができるのか、ワクワクする気持ちもありました。コテージに戻って、何を作るか議論します。

真夜中のブレスト

私たちのチームはtoioを使った新しいゲームを作ることを裏テーマとして取り組んでいました。そこに、ゲーム内でAIを活用することと、複数人で遊べることを組み合わせたアイデアを考えます。

日付が変わる直前か、変わった後か、しばらく議論した末に、大まかな2つの方針がまとまりました。 1つ目は「toio複数個をゲームコントローラーとして使うこと」 です。toioは特殊なパターンが印刷されたマットの上で、絶対位置を検出することができます。ゲーム画面と手元の物体の位置関係が一対一で対応するのが、何か面白いユニークな体験を生み出すと考えました。そして**2つ目は「言葉を題材としたゲームにすること」**です。テキスト生成AIは大規模言語モデルにより実現されています。安直ですが、テキストを生成するAIを使うのであれば、言葉の土俵で扱うのが本質的で面白いのではないかという話になりました。

大枠が決まるとゲームの輪郭が見えてきました。「toioを操作して、画面上に散らばったひらがなを集めて、テーマに合った言葉を作るゲーム」。

ゲームが始まると、1つのテーマが発表されます(例: 夏っぽい言葉)。このテーマにより合った言葉が作れたら高いポイントがもらえます。2人のプレイヤーでスコアを競う対戦ゲームです。プレイヤーは1〜3個のひらがなを集めて、AIに言葉を推論させます。「ひ」を集めると「ひのこ」「ひよこ」といった、「ひ」から始まる言葉がランダムに推論されます。そこでプレイヤーは「ま」を取ってきて、「ひまわり」を推論させることを狙うといった、LLMの仕組みを素直に使ったゲームです。

ルールがきまったらゲームの仕様をテキストに書き出し、Claude Codeに読み込ませ、コードを生成させます。午前2時ごろ、最初のプロトタイプが完成しました。遊んでみると、結構面白い。ただ、AIが生成したままの状態だと、操作性やUIがイマイチだったりしました。少しずつ操作性をチューニングしていきます。

あともじふぃあのプレイ画面

プレイヤーはそれぞれ3つのtoioを操作し、1つのtoioに1つのひらがなをキープできるようになっている仕様が、画面の仮想空間と手元の物理空間をリンクさせるために意識したポイントです。

文字を集めて、雰囲気にあった言葉をつくるので、「もじ」と「atomosphere」を合わせてタイトルは「あともじふぃあ」としました。

あともじふぃあのタイトル画面

わかりやすさとメッセージ性

時刻は午前3時。ある程度ゲームが組み上がってきたところで、「ちょっと待てよ、もっと面白いものができるんじゃないか」 という議論が始まります。 挙がった課題は次の2つ。

1つ目は「色んな新しい要素が一気に押し寄せてきて、すぐにゲームにのめりこめない」。複数のtoioを使ってひらがなを集めること。AIが集めたひらがなをもとに言葉を予測すること。予測した言葉がテーマに合致すると得点が高いこと。これらがわかって初めてゲームが面白くなります。

テーマをもう一度思い出します。AIゲームセンターに置くゲームを作る。ゲームセンターでプレイされるゲームを思い起こすと、観客が後ろからプレイヤーの肩越しに画面をじっと見つめています。そして俺だったらこうするのになぁとか、こんな手があったとか想像しながら次は自分の番だと意気込んでいるのです。一方、ここまで時間をかけて作ったゲームは、周囲から見てルールを理解するのが難しい。このことがネックとなり、行列ができるようなゲームにはならないのではないか、と課題に感じました。

2つ目は「なんとなくメッセージ性に欠ける」。これまで私たちのチームが作ったゲームには、なんらかのメッセージ性を持たせて作ってきました。これは「宇宙に凹みを作る」という壮大なテーマに対して、人類のあり方や今後を問いかけるメッセージを発信することで応えようとする、一種の挑戦でした。

午前4時からのスクラップ&ビルド

キービジュアル

そういうわけで、3人で話し合い、一度組み上がったゲームを作り直すことにしました。最終的に決まったアイデアは 「言葉を選び取り、テーマに合致している順に並べるゲーム」。

基本的な操作感はそのままに、プレイしていない周囲の人が見た時にわかりやすくなることを狙いました。「ひらがなを集めて言葉が予測される」という複雑さを取り除き、最初から言葉が画面上に並ぶようにしたのです。

画面上には言葉が散らばっており、その中から任意の言葉を選んで、テーマに合うと思った順に並べていきます。AIが各言葉のテーマとの一致度合いをスコアリングし、並び順が正しいかを判定して、ユーザーにポイントを与えます。制限時間2分の間に何度チャレンジしても良いので、より早く、より正しい順に並べることが勝利の鍵となります。順番が合わないと減点されるようにして、正確さと速さの駆け引きを生むようにしました。

Seesaw Wordsのプレイ画面

メッセージ性については、「AIに言葉の重みがわかるのか?AIが考える言葉の意味の強さを推測しながら、人間が考える言葉の重みをどんどん集めて、AIに教えていく」。そんなコンセプトにまとまりました。

そこから発展し、言葉の重みが目に見えないなら、見えるようにしてしまおうということで、得点に応じて傾くシーソーを作ることにしました。言葉の重み(≒正しく言葉を並べることで獲得したポイント)で、勝っているプレイヤーの方にシーソーが傾くものを作ろうとなりました。

こうして、午前4時からゲームの作り直しが始まります。シーソーに関しては新規の制作物です。深夜と早朝の狭間に3Dプリンタが動き出しました。

大活躍だった3Dプリンタ

続いて肝心のシーソーの制御はどうするかを議論します。ゲーム画面表示やゲーム状態管理、toioを制御するメインPCから、シーソーを制御するPCにゲームスコアをOSCで同期するアーキテクチャが決まりました。

アーキテクチャ

メインPCのプログラムを私が担当し、シーソー制御プログラムを水落さんが担当し、シーソーのボディ設計やSunoによるBGM制作、出題テーマのチューニングを田中さんが担当しました。これは誰かが取りまとめて舵取りしたわけでもなく、気づいたら自然と漏れなくダブりなく分担できている状態になっていました。即席チームとは思えない連携っぷりで感動しました。

もくもく開発タイム

午前8時半、ついに完成

そしてシーソーが組み上がったのが午前8時。統合テストプレイができたのは午前8時30分のことでした。なんとか一発ですべてがうまく連携して動きました。なんとかなってよかった。

Seesaw Words完成

タイトルは「Seesaw Words 〜ことばのおもみ〜」に決まりました。たまたま「シーソーゲーム」と「innocent world」が組み合わさったようなタイトルになり、ミスチル感がすごいねとチームで笑っていました。夜通しの開発で疲れていたのかもしれない。

Seesaw Wordsのタイトル画面

起動しているtoioが自動的にペアリングされていきます。この裏でAIがお題を考えてくれます。

Seesaw Wordsのペアリング画面

toioのペアリングが完了するとお題を発表。

Seesaw Wordsのテーマ発表画面

3カウントの後ゲームがスタートします。プレイ時間は2分。時間内になるべくたくさん、正確に言葉の重みを評価していきます。

Seesaw Wordsのプレイ画面

Seesaw Wordsのプレイの様子1

Seesaw Wordsのプレイの様子2

完成したゲームのプレイ動画は、ガジェタッチさんのライブ配信のアーカイブをご覧ください。

結果発表

3つのラウンドが終了してついに結果発表。 審査員の方の評価ではなんと、ナル先生と南治さんの2人組「AIもいっしょ」チームに並んで同立1位。 そこから参加者投票で最終決戦となり、「AIもいっしょ」チームが優勝、私たちは7チーム中2位という結果になりました(SANU X投稿)。優勝は逃したものの、作ったものを色んな人に楽しんでもらえたのが嬉しかったです。

「AIもいっしょ」チームの最終成果物、スタックチャンとアーケードコントローラが合体したビジュアルがすごく可愛いので、ぜひ見てください(ナルエビ三世 X投稿)。AIがスティックを操作してゲームプレイをアシストしてくれて、それが物理的に見えるというのが愛らしかった。

どのチームの得点も大差はつかず、接戦でした。何らかの技術の第一人者も、日頃開発に親しみがない人も、ハッカソンという同じ土俵で競い合う。数年前は想像もしていなかったし、実際にやってみるまではどうなるのか見当もつかなかった。時代の変化を肌で感じる、面白い体験ができてよかったなと思います。

全体を通して

「つくること」の敷居が下がって変わる「つくりかた」

生成AIを活用することで、実装が高速化、自動化され、コンセプトについて集中して考える時間が長くなりました。まるで、ものすごいスピードで移動する乗り物をを手にしたようで、良い方向に進めば目的地に早く辿り着けるし、迷走するとゴールが見えない遠いところを彷徨うことになります。何を作るかの方向付けや、何を良しとするか価値観に基づく目利きがより重要になった気がします。

とりあえず動いて体験できるものを作る上で、技術的な知識は必須条件ではなくなったのかもしれません。開発未経験のチームがAIを活用して画像を保存するためのストレージや画像認識のためのAIを組み込んだ見事なWebアプリを構築しているのを目の当たりにして思いました。技術的な知見は、なにができるか見当をつける引き出しになることもあれば、設計や実装の複雑さを前に思考の柔軟さを拘束することもあります。多様な価値観や専門性を持った人が集まったハッカソンに参加し、様々なアイデアに触れることで、自分のアイデアの探索空間がいかに限られた範囲のものかを思い知りました。コードを書くスピードが圧倒的に速くなった今、これまでのやり方をアンラーンしてもっと自由なスタイルでものづくりをしても良いのかも。

最もエキサイティングなゲームは…

誰かと一緒にものをつくること、誰かが作ったものをみんなで面白がることの喜びを改めて実感しました。

このハッカソン自体がAIを使った壮大なゲームなんじゃないか。 誰かと自分たちで遊びを考えて、作って、できた遊びを面白がる。プレイヤー約20人、プレイ時間約20時間、コアな体験を提供するためにAIがエンジンとして機能しているゲーム。

AIにより実装の障壁が下がりつつも、何を作るかを考えたり改善を入れる余白もある今が、楽しむチャンス。AIがアイデアの発想から、設計、実装、検証、修正、デプロイ、集客まで100%完璧にこなしてしまう時代はそう遠くないかもしれない。

そうなったとき人間に残る価値ある仕事はなんだろう。人間のためにより良い世界を作ることを目的とすると、人の価値観に基づいてAIを舵取りすることが残された最後の仕事だろうか。

さいごに

平日2日間休暇を取って参加してよかったです。参加者の皆さんが自分とは違う形でAIを活用しているのを見るのは新しい発見があったし、何より楽しかった。

最後に、類を見ない豪華メンバーを集めてこのハッカソンを企画された清水さん、最高なロケーションを提供いただいたスポンサーのSANUさん、臨機応変な対応でイベントをまとめ上げた運営の皆さん、作品を面白がり世の中に届けてくださったメディアの皆さん、ハードな日程をともにやりきった参加者の皆さん、チームメンバーの田中さんと水落さん、素敵な機会をいただけたことに感謝します。

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きゃべ / Masaya Kurahashi
きゃべ / Masaya Kurahashi
Software Engineer, Product Manager