きゃべログ

元祖自己啓発書と称される『人を動かす』を読んだ

読書

『人を動かす』は1937年に執筆された、デール・カーネギー氏の著書。図書館を歩いていると雑誌の『PRESIDENT』が色んな人がオススメする本をキュレーションするという特集に目が留まり、それをパラパラとめくったのが、この随分前に執筆された本を読もうと思うきっかけだった。 ソニーの前社長である平井一夫さんのインタビュー記事で、彼の経営のバイブルと言える本が『人を動かす』だと書かれている。教訓として「笑顔で接する」「誤りを認める」などが挙げられていて、なんとなく人の本質が書かれていそうな気がして興味を持った。すぐに借りようと思って検索すると、比較的新しい版は貸出中。開架に残っていた、黄ばんだ、シミがページ各所についている1958年版を借りた。

比較的古い版ということもあり、古い言葉遣いがあったり、形式的に少し読みにくい部分もあったが、内容はどんどんページをめくりたくなるものだった。 『人を動かす』というタイトルで、無理やり誰かの考え方を変えたりするような印象を受けるが、個人的には「人の心の動きの原則を知る」本だと思う。 著名人の多くのエピソードを挙げて、原則を具体的にわかりやすく解説してくれる。事例を読んでいると、自分が過去にしてしまった失敗を思い出してしまい、辛い気持ちにもなるが、それが反省の大きな材料となる。ストレートな物言いで、これまで友人と交わした会話や仕事でのやりとりなど、色んなことが頭をよぎる。後悔を供養する貴重な体験だと思う。自分が日頃から尊敬する人達に対して、どうしてそのように感じるか、腹落ちする記述もたくさんあった。

一通り読み終えて気に入ったので、手元にも一冊置いておきたいと思い、一番新しい文庫本を買った。 借りていた1958年版を読んでいて印象に残ったところにはひたすら付箋を貼っていたので、自分で買った新しい本を読みながらその付箋を移す作業をした。付箋を貼っていたところが版を重ねるうちにいくつかカットされていることに気づいた。冗長な物言い、読みにくい日本語、そして章タイトルとあまり関連がない文が多くカットされていた。後半の「第5部 奇跡的効果をおさめる手紙」「第6部 幸福な家庭を作る7原則」に至っては部が丸ごとカットされている。

「第5部 奇跡的効果をおさめる手紙」はざっくり要約すると、「人を頼り、感謝すること」について書いている。良いことを書いているように思うが、原則をタイトルで掲げておらず、他の部と形式が異なるためカットされたのかもしれない。

「第6部 幸福な家庭を作る7原則」では女性が家庭に入ることを前提とした記述が多いため、現代においてはジェンダーにまつわる議論を呼ぶような記述と判断されてカットされたものと思われる。この前提を取り除けば、人に対する心遣いについて書いてあり、良いことが書いてあると思ったので勿体ないと思った。この部で印象的だったのが「父は忘れる」というW・ヴィングストン・ラーネッドの一文である。要約すると「思い通りに動いてくれないと息子に強く当たる父が、息子からの純粋なやさしい愛情を感じ取り、息子に過剰な期待をして大人と同列に考えていたことを反省する」という内容である。心が動いた文章だった。「父は忘れる W・ヴィングストン・ラーネッド」とググってみるとインターネット上にいくらでも転載されているので、気になった方は是非読んでみてください。

人の心の動きにもっと気を遣って丁寧に生きていきたいと思うきっかけをくれる、ベストセラーと言われる所以が理解できる一冊でした。


きゃべ (@cab_kyabe)
piyo piyo software engineer