『シン・ニホン』で「井の中の蛙大海を知らず」を自覚する
2021/01/30
昨年の話題書だが、発売されてすぐにポチってしばらく積読してしまっていたので読んだ。
読み終えた後、自分が狭い世界に生きているということを感じて、まだ見えていない白地図に想いを馳せてしまった。世界地図の中の日本の、とある都道府県のとある市のごく一部の社会の行動範囲しかない、そういう物理的な、地理的な無知を感じただけではない。今見ている風景の周辺視野に強いもやがかかっているような、見ているものに奥行きを感じていないような、そんな気持ちになった。
医療、環境、社会構造、経済、教育など切り口を様々にし、現実世界を大きな系として捉えて課題が提起されていく。日本という国が世界の中で未来強く生き残れるように。
普段、目の前に見える課題に飛びつくように取り掛かってしまうが、その先に社会という系にどんな影響を考える余裕がない。そんな自分自身に気付ける良い本だった。目の前のシステム障害、機能開発、掃除、洗濯、今日の夕食を決めること。やることはたくさんあるし、どれもやらないといけない。そして近視的に目の前のことに夢中になってしまう。そして、未来に目を向け、時間、お金、そして情熱を投資することを忘れてしまう。これは自戒だ。そうならないように現在、近い未来、ちょっと先の未来、遠い未来に対して同時並行的にリソースを分散投資していく必要がある。書中の言葉を引用するなら「イニシアチブ・ポートフォリオ(Portfolio of Initiatives)」として紹介されたマッキンゼーの戦略グループ考案のアプローチである。今取り組まなければならない課題に取り組むこと、未来をより良くするため課題に取り組むことは二者択一ではなく、両立する。
色々個人的に感じることをつらつらと書いてしまったが、この本で扱われる本筋はAI/データ時代に世界的な遅れをとっている日本がいかに世界的にプレゼンスを高めていくか、戦略を示していく提言である。社会通説にデータ分析というメスを入れ、あるべき形を説いていく。
世の中には無数の課題が山積みである。逆に課題であると反射的に感じてしまうことが実は本質的な課題ではなかったりもする。ビジョンとデータをして課題を見出したり定義していくことの重要性が説得力を持って言語化されている。
耳が痛い話も多いので、休日の朝、スッキリした頭で、心のゆとりがある時に世の中の現実と向き合うために読みたい。FACTFULNESSも合わせて読むと書いてあることが素直に受け入れやすいと思う。